最近タイ・チェンマイで大量の大麻を栽培、販売したとして日本人容疑者が逮捕されました。 「タイで有名な日本人」と報道されているようなので、私も多くの知人から「知り合い?」と聞かれましたw もちろん知り合いでもないですし、聞いたこともありません。
それより、この件の日本のニュースを見ていると、タイの大麻の実情とは大きくかけ離れているものが多いと感じます。適当な記事を信じると人生を棒に振る可能性もありますので、まずはそのあたりの話。 そして多くの人が興味を持ちそうな、タイの大麻ビジネスの今後について書いてみます。
解禁、合法、本当に?
日本の報道では、「タイ 大麻」の後には、解禁や合法などの言葉が続き、さらにアジア初とか大麻先進国とかの文言が続きます。 特に、タイは2019年に医療用大麻が解禁されて・・・という一文が日本人には刺さっているようです。
私の知り合いもそうですが、タイもアメリカのコロラド州のようになっている、またはタイはユルそうだからカナダと同じ?なんて考えている人も多いようです。ですが実情は全く違います。
医療用大麻は確かに一部合法化されていますが、それは政府公認の商品のみですし、購入できる場所も限られています。 また、基本的に医師の処方箋がなければ買うことは出来ません。
そして大きく違うのが、大麻を吸うのは問答無用で逮捕ということです。公認のクリニックではオイルやクリームなどが販売されていますが、紙巻きやパイプで吸う用の乾燥大麻・樹脂は販売されていません。日本の報道では、タイ人は歴史的に大麻に親しみがあるというようなものが多いですが、大麻の煙の匂いに対してのタイ人の一般認識は=犯罪の匂い、です。
タイは密告が多い
日本人は大麻の煙の匂いなんて知らない人がほとんどですが、タイ人でこれを知らない人はまずいません。そういう意味ではタイ人は大麻に慣れていると言えます。ただし、一般のタイ人はその匂いを不快に感じています。不快にというか、大麻の匂い=犯罪(治安悪化)と考えています。
私の知り合いの話をします。この人は10年くらい前にマリファナの使用か所持かでタイで逮捕されました。何日かで釈放され、罰金のみで懲役刑にはならなかったそうなのですが、釈放後日本で会った時の彼は、驚くほどやつれていました。
この人がなぜ捕まったか?ですが、それは彼が住んでいたコンドミニアムの隣の住民の通報です。借りていたコンドミニアムの自室で、彼はいつも窓を開けて大麻を吸っていたそうですが、それを隣人に通報され逮捕されたとのこと。
私が知る限り、タイという国は密告が非常に多いです。それが知り合いだろうが、知らない外国人だろうが、ネタがあれば即密告するタイ人は少なくありません。そういえば、昨日のタイのニュースでも、自宅で大麻を5鉢くらい栽培していたという主婦が逮捕されたニュースがありました。これも間違いなく近所の人の密告でしょう。
販売は重罪
そして販売はタイでも当然重罪です。この前捕まった日本人も、おそらく10年以上の懲役になるのではないでしょうか? タイの法律では、大麻(10kg未満)の国外への販売は2~15年の懲役+罰金です。今回の容疑者の場合、10Kgを超えていそうなので、さらに長い懲役の可能性もあります。販売所持以外にも犯罪を犯していればそれも加算されるはずですので、恩赦でも無ければ生きて出られない可能性もあります。
タイはユルいなんて考えは危険です。もちろん販売ではなく、使用や所持で懲役刑になった外国人はいくらでもいます。
リナちゃんはなんで?
タイの大麻事情をややこしくしている最大の要因は「リナちゃん」の存在でしょう。タイで医療用大麻が解禁され、日本人旅行者も気軽に買える!みたいな日本語記事や動画が結構な数ありますが、この全てがリナちゃんの店(クリニック)に関係しています。*Youtubeによく出てくる、チョイ太目でよく喋るオバサンですね。
本来は処方箋がなければ買えないはずですが、このお店では、眠れない、痛いなどの自己申告でも買えるかも、ということらしいです。ここはクリニックなので、おそらくその場で医師が処方箋を書いているというスキームなのだと思います。例えるなら、日本のパチンコ屋のような抜け穴ということでしょう。
ただし、この「リナちゃん」という人はもともと芸能人です。過去には、自分のトーク番組やワイドショー的な番組を持っていて、タイ人で知らない人はいない有名人。 テレビ出演当時は、非常に気が短く、芸能人から取材相手、政治家にまで相手構わず噛み付く狂犬タイプだったとか。また、口の悪さも相当だったようです。
もしこのお店で本当に大麻製品が買えるとすれば(旅行者が)、この人がオーナーだからなのかもしれません。前述の日本人容疑者のように、大麻を無許可で販売・栽培をすれば相応の刑を受けることになります。甘く見ていると痛い目にあいますね。
タイ政府の思惑
とはいえ、タイが近いうちに嗜好用大麻も解禁する事はまず間違いないでしょう。これはタイ政府の政策を見れば明らかです。
まず医療用を解禁し、その後に嗜好用もという流れはアメリカと同じ。さらにライセンスを得れば、6株まで自宅で栽培可というのもアメリカと全く同じ。タイの大麻政策がアメリカの事例をトレースしているのは間違いありません。
さらに新型コロナウィルスのパンデミックで、嗜好用大麻解禁の時期が早まったのではないかと思います。タイはご存知のように観光立国。外国からの旅行者が落とす金がタイの大きな収入源です。ですがタイのとったコロナ対策はかなり厳しいもので、この対策により観光業、飲食業、娯楽関連施設は壊滅状態になっています。
なぜ観光立国のタイがそんな政策を実行したのか?ちょっと謎ですよね。 ですがよく考えてみてください。タイの新型コロナウィルス対策の陣頭に立ったのは、アヌティン保健相。アヌティンさんといえば、「マスクをしない白人はタイから出ていけ!」のツイートが有名です。この時は、これを聞いた多くの日本人は、彼を支持するんじゃないか?なんて思いましたが、そんなアヌティンさんこそが大麻解禁推進派の筆頭です。
おそらくアヌティンさんの構想は、多少強引にでもコロナを封じ込める。経済的な打撃は大きいが、ウィルスの感染・蔓延が長引けば長期リセッション入りは確実。でもタイには大麻解禁という切り札がある。適切な時期に切り札を切ればリセッションは長期化せずV字回復、そして持続的な成長。
と、こんなところでしょう。しかもこれも偶然にもアメリカの事例をトレースしています。アメリカが大麻解禁に大きく舵を切った原因は、あのリーマンショックです。リーマンショックで大ダメージを受けたアメリカですが、その後の驚異的なV字回復には、この大麻解禁も大きな役目を果たしました。
タイの大麻ビジネスに参入するには
タイの大麻ビジネスに参入したいと考える日本人は多いでしょう。ですが、タイという国はいろいろと一筋縄ではいかない面が多くあります。ですがこのビジネスへの参入方法はいくらでもありますし、間接的に恩恵を受けるという方法もあります。
ですが、とりあえず直接的な方法、栽培や販売への参入障壁、日本人(外国人)がそう簡単に参入できないであろう厳しい条件を上げてみます。
栽培が許される人
まず大麻の栽培が許されている人について。これは職業的な縛りがあります。栽培ライセンスの申請ができる職業とは、
- 科学者
- 医師
- 農家
科学者と医師は共通で、大麻成分のガンへの効果を研究するなどの場合、いわゆる製品開発です。買うと高いので自分で研究材料を栽培できるようにするという意味です。
そして農家。これはアヌティンさんが選挙公約にしていたものですが、彼の公約はアメリカ(カリフォルニア洲)の政治家が若者に向けたキャンペーンのような、マリファナ解禁アピールではありません。
アヌティンさんが掲げたのは、低所得農家に大麻栽培を許可し、それを国が買い上げることで年収アップを計るというものです。 彼は、単純に大麻解禁によってタイ経済を盛り上げるというより、大麻ビジネスで低所得層(地方の農家)を中産階級レベルに引き上げようと考えたのです。
ということで、特別なスキルを持っていない日本人がタイの大麻ビジネスに参入しようとすると、地元農家と組む以外には無いと思います。
タイ独自の流通方法をとる?
これは推測ですが、政府の大麻政策を見ていると、製品化と流通の一部はアメリカ式をトレースしないように感じます。どういうことかと言いますと・・
- 国がライセンスを与えた農家のみに栽培を許可する
- 栽培した大麻は政府が全て買い上げる
- 買い上げた大麻を国が製品化する*ここは民間へのアウトソーシングもあるかも?
- 嗜好用も国が許可した店舗(施設)のみが販売できる
こんなところではないでしょうか? 嗜好用の場合、栽培も販売もライセンスを得ている業者は、一部自身での販売可能というのはありそうです。
ですが、アメリカと違い基本的に国がそのほとんどを管理するように思います。また、アヌティンさんの公約を考えると、外国人や外国企業に栽培や販売を許可するとは思えません。もしかすると、アメリカはタイ政府に圧力をかけて市場を開放させようとするかもしれません。ですがそれをやると、タイ政府は中国寄りになるでしょうから、アメリカの圧力も効果は限定的です。
そんな理由から、日本人(外国人)がタイの大麻ビジネスに直接関わるというのは、そう簡単ではなさそうです。
間接的な参入
これはアメリカの大麻ビジネスを参考にすればいいですね。
まずはマリファナツアーを主催する旅行代理店。これはアメリカでも成功例が多いです。日本人向けだと、安全を売りにする企画などを考えればいけそうです。嗜好用もいいですが、医療用で富裕層相手に長期滞在者を募るというのも良さそうです。
そして販売店と併設する形で大麻グッズを販売する。これは主に日本人旅行者向けですかね。日本語を話せる日本人スタッフ常駐で、パイプなどを販売する。ついでに販売店やホテル、観光地の案内までするとか。タイ旅行初というツーリストには心強いと思います。
ホテルや観光地、レンタルバイク、大麻ショップなどにツーリストを紹介するビジネスは、タイでは当たり前のようにあります。グッズ屋だけでなく、そういった収入もマーケティング次第で当たると思います。なんといっても大麻の集客力は絶大ですから。
日本向けはおすすめできない
訪タイする日本人向けビジネスは良いですが、日本国内の日本人向けの大麻ビジネス(タイからの)はおすすめできません。いや、おすすめできないというより、単純に「違法で出来ない」と思います。
というか、日本が大麻を解禁することってありますかね? 私は自分が生きているうちは100%無いだろうと思っています。まあ医療用に関しては、病院内のみの使用とかはあるのかなぁ? どちらにしても、私自身は日本向けの大麻ビジネスは全く考えていません。
まとめ
でも、どうせなら直接ビジネスに関わりたいですよね。
大麻ビジネスはグリーンラッシュなんて呼ばれていますが、もしうまく参入することができれば、人生最大の勝負ができるかも知れません。
もしかすると今タイに住んでいる人は、いい時代に良い場所にいた、なんていつか言える時が来るかも。そう言えるようにするには、長期的に戦略的に準備する必要がありますね。
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