前回書いたのは、
- コロナ直後のタイは飲食ビジネスが大チャンス
- フードデリバリーサービスの台頭で開業リスクが激減
- 価格設定をミスると危険
この辺りの説明でした。
今回はこれをさらに深堀り、最終的に目指す店舗像について書いてみます。
必要なもの
まずタイで飲食店を成功させる最低限必要なものについて。ここで言う必要なものとは、この飲食ビジネスを成功させるのに欠かせない条件のことです。
第一に、これは前回も書きましたが「おいしい料理」。
必要なもの1 美味しい料理
これはコロナも国も値段も関係なく飲食店には必要なものなので、本来はわざわざ書くまでも無い事ですが、私は過去にこれを軽視する人を何人か見た経験があるので一応説明しておきます。
例えば飲食ビジネスの経験が無い日本人が、タイで飲食店を始めるとします。よくあるパターンは、焼き鳥、日本食居酒屋、うどん・そば、この辺りの店を出す人が多いですよね。
これらを美味しく提供できれば、何も問題はないと私は思います。まあ、デリバリーが合うか?を考えると微妙な気もしますが、普通に美味しいレベルなら選択ミスでは無いと思います。
ところが、私の知り合いはこの3つのお店をタイで始め、味を軽視して大失敗をしました。*3店舗、全て違うオーナーです。
状況は、焼鳥は完全な素人レベルで論外。営業もかなりいい加減で店は全てタイ人任せにし、半年持たずに閉店。*最近は分かりませんが、10年くらい前はこのパターンは珍しくなかった。
居酒屋とうどんやは、オープン時に結構な数の客が来ました。ですが居酒屋は味がイマイチだったからかとにかく客単価が低く、これを克服できず月単位で一度も黒字化出来ずに閉店。
うどん屋は、まずうどんがバサバサしていて、つゆも何かが足りない感じ。このオ-ナーさんとはわりと仲が良かったのでそれをハッキリ伝えましたが、「タイ人に和食の細かい味はわからないだろうし、日本人は懐かしがって食べるだろう」と軽く流されました。ここも半年ほど頑張りましたが、開店後数週間で閑古鳥が鳴きあえなく閉店。
美味しい料理の作り方
ではどうやって美味しい料理を作るか? 今の時代ネットで検索すれば、料理の作り方ならいくらでも出てきます。 イタリアンの有名シェフから和食の有名店の料理人まで、その筋の本物がご丁寧に動画で解説しています。 こういったものを徹底的に調べ、そして何度も練習すればレストラン級の味は必ず出せます。
実際にそうやって有名料理店がいくつも生まれています。タイなど外国に移住している方の多くは、時間はたくさんあると思います。 材料も、今のタイならほぼ全て揃うでしょう。仮に現物がなくても、代用品が必ずあります。 暇な時間を料理の研究に当てれば、いつか必ず「コレだ!」という料理を発見できるはずです。しかも勉強は無料、本を買う1,000円程度すら必要すらありません。
普通は1日三食ですから、生きているだけで1日に3回は料理の練習が出来ます。練習・勉強ができて美味しい料理が食べられます、仮にここで挫折しても損はないと思います。
あとは、そのエリアのタイ人(住民)に好まれる料理はなにか? 周辺の店舗、人気料理、利益率、コスト、その辺りを意識して探せば、当たりメニューは結構な数あると思います。
必要なもの2 パンダリスクを消す方法
パンダやグラブといったフードデリバリーサービスは、その30%以上という手数料がリスクになる可能性があります。 前回は広告費として考えれば30%なんて安いものと書きましたが、それでも営業を続けていくうちに、手数料の30%に利益を削られ経営に疲弊してしまう可能性はあります。ですが、最初から店舗を併設しテイクアウトも行う事を予定していたら?
次の条件がこのビジネスの最大のキモになります。 それは、デリバリー専門店ではなく最初から店舗を併設する、またはテイクアウト可能の店にする計画を立てておく事です。
戦略はこうです。
最初は自宅などでパンダ・グラブを利用し開店する。パンダやグラブの強力な集客能力を利用し名前を売る。デリバリー専門店で営業しながら、料理の腕と運営スキルを磨く。
ある程度名前を売り、安定して注文を取れるようになったら、店舗営業と店舗でのテイクアウトを始める。*余裕があれば最初からやってもいいし、持ち帰りのみでもOK
もうおわかりですね、店舗・テイクアウトの売上は100%自分のものです。ということは、店にきてもらえば一気に10~20%の売上アップが見込めることになります。ここで、「デリバリーの客は店に来ないんじゃないの?」という疑問が湧くかもしれません。
ですが、テイクアウト・店舗での食事の場合は10%割引にするというのはどうでしょう? または、特典をつける。店舗での食事にはビールやカクテルのサービスをするなどの特典をつけるのも良い手です。持ち帰りなら、ギョウザ1パックプレゼントとか。 これを最初から頭に入れておけば、ビジネスをかなり有利に展開できると思います。
そして、ここで前回書いた「郊外戦略」が意味を持ってきます。そうです、郊外なら土地が安いという巨大なメリットがあります。*借りるのも安い
郊外に客が来るのか?
またまた不安になるのが、「そんな郊外に客が来るのか?」でしょう。
ですが、例えばチェンマイのカフェを考えてください。チェンマイには有名なカフェが数多くありますが、その多くはとんでもない場所にあります。車で行くと、横転するんじゃないか!と思うような険しい荒れ道を数キロ登るとかは普通です。 しかもそんな場所にあるカフェに結構な客がいるのです。
さらにこういうカフェは、コーヒー一杯で70~85バーツ、ショートケーキが1個70~90バーツといったチェンマイ中心地並みの価格設定です。
もちろん、こういったお店は観光客目当てですので、エリアに根差したお店と同一視は出来ませんが、客の大半がタイ人だというのは事実です。要はタイ人も、おいしいとか、珍しいとか、景色がいいとか、おしゃれとかの理由があれば、その程度の料金なら問題にしないのです。
まとめ
ということで、
- 何かしらの付加価値のある料理なら郊外でも問題なく勝負になる。
- 屋台のタイ料理の持ち帰りや、ガパオのデリバリーと価格競争をする必要はない。
- フードデリバリーサービスの手数料は高いが、戦略的にいけば強力な味方になる。
あとは何を売るかを決めるだけです。 タイに移住、ロングステイしている人なら時間はたくさんありますよね。時間をかけて戦略を練り、味のレベルを上げてください。
ちなみに少し触れましたが、どんな食材でも、どんな調味料でも今のタイなら手に入ります。しかも隅々まで探せば、かなり安いものも見つかります。また、どうしても定期的に手に入らない食材や調味料も、必ず代用品は見つかります。
最後に
最後に私の知り合いの話をいくつか紹介します。
これも以前、ブログで書いたかツイートした記憶があるのですが、チェンマイの市街地で飲食店をやっている私の友人2人(タイ人)が、今年(2020年)自分のお店を閉めています。
1人はパンデミックが本格化し始めた4月に早々と閉店しました。個人的には、いくらなんでも早すぎるのでは?と思いましたが、その後の状況を考えるとこの判断は完璧でした。こういう危機を見逃さない嗅覚を持つ人がたまにいます。
そしてもう一人は、6月くらいまで様子を見ましたが、結局耐えられずに閉店。この人は、ある商業施設の店舗を借りていたのですが、もともとそこで店をやるのが夢だったらしく、まさに苦渋の決断だったとのこと。おそらく、それなりに損害が出たでしょう。
また別の知り合いで、かなり昔からチェンマイ市街地で有名な飲食店をやっている人がいます。このお店は、チェンマイ人なら誰でも知っているようなレベルの有名店ですが、新型コロナウィルス発生後に売上が90%ダウンしたそうです。しかも9月になっても、売上は3割程度しか回復せず、非常に厳しい状況だと言っています。この知り合いの場合、自分の土地でやっているのですが、それでも存続に関わる危機に直面しています。
この知り合いのお店は有名店であるがゆえか、まずデリバリー化が遅れました。もともと店内の雰囲気を楽しむコンセプトなので、デリバリーや持ち帰りに向いていない事も災いしたのでしょう。
コロナ前はネームバリューと好立地で好調でしたが、まさに考えもしなかった事態で今や倒産寸前に追い込まれています。彼らは、コロナが収まれば・・と言っているようですが、それで客足が戻るのでしょうか? こういうお店は街に多くありますが、長期間好立地の恩恵を受けてきたので、次の一手が打てずに次々と潰れています。知り合いの店も、今の所待つ以外に対策を講じていないので、長くはないかもしれません。
日本のバブル期によく聞いた話ですが、銀行(大手不動産)は高額な土地を持っている人に融資をしたがります。市街地の広めな土地にお店を出していたりすると、店舗拡張+自宅建築(豪邸)を提案してきたりします。ここで多いのがオーバーローン。タイでも2020年の初めまではオーバーローン天国でした。こういう人達の現在は地獄、祈るしかない状況です。もともとタイの不動産は流動性に問題がありましたが、この状況が続けば不動産価格は想像以上に下落すると思います。ある意味、お金持ちの人にはチャンスですが・・
ですが、今回紹介した郊外の飲食店戦略なら、こういったピンチとは無縁です。とりあえず調理場とフードデリバリーサービスがあればOK。仮に失敗しても、大した痛手はないので再チャレンジが可能です。
本来は店舗を借りる、内外装、人件費、自分も働くなら会社設立、労働許可の条件を満たすなど、タイで飲食の繁盛店を作ろうとするとかなりの金額が必要でした。そんな理由で、飲食は移住者がやってはいけないビジネスの筆頭級でしたが、今やそれが大きく変わり、移住者が始めるビジネスとしてかなり有望となっています。
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